年金分割とは、婚姻期間中の年金納付記録を分割する制度のことであり、離婚をしたときに「厚生年金」や「共済年金」の保険料の加入記録を夫婦であった者どうしの間で分割することが出来ます。
年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」という2種類があります。
3号分割
「3号分割」は平成20年4月1日から実施されており、年金事務所に請求を行なうだけで、3号被保険者へ自動的に50%が分割されるというものです。
1号被保険者 | 国民年金に加入している、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人等 |
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2号被保険者 | 国民年金の加入者のうち、民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者 この第2号被保険者は、厚生年金や共済の加入者であると同時に、国民年金の加入者にもなります。 加入する制度からまとめて国民年金に拠出金が支払われています。 なお、65歳以上の被保険者、または共済組合の組合員で、老齢基礎・厚生年金、退職共済年金などの受給権がある人は第2号被保険者とはなりません。 |
3号被保険者 | 国民年金加入者のなかで、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満)のことです。 |
分割して納付記録を移される方(会社員、公務員)→「特定被保険者」といいます。
分割して納付記録を受ける方(主婦−3号被保険者)→「被扶養配偶者」といいます。
この場合に分割されるのは、平成20年4月1日以降の分だけです。
平成20年3月31日までの分は「合意分割」の方法によらなければなりません。
合意分割
「合意分割」は平成19年4月1日から実施されており、婚姻期間中の厚生年金保険料納付記録を最大2分の1まで分与する事が出来るという制度です。
分割により納付記録を受ける方(会社員、公務員、自営業者、主婦)→「第2号改定者」といいます。
合意分割を行なうための方法には、以下の2種類があります。
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年金分割における情報提供通知書の取得先 |
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結婚が平成20年3月31日以前のご夫婦で、いずれか一方が会社員や公務員、私立学校の教員など、婚姻期間中に「厚生年金」や「共済年金」の払込をしていた時期がある場合には、上記のとおり、夫婦間で按分割合を定めて年金事務所での手続きを行う必要があるのです。
上記の「夫婦間で協議」が合意に至らない場合には、家庭裁判所に分割内容を定める為の調停申立を行い、調停または審判によって分割内容を定め、年金事務所(旧:社会保険事務所)に年金分割請求の届出をすることになります。
※注意事項※
年金分割請求の届出は離婚から2年以内に行わないと、分割がされません。
自営業者などの国民年金(1号被保険者)保険料納付記録は分割されません。
分割を受けられる被保険者は1号~3号のいずれの方でもOKです。
事実婚の年金分割
正式に婚姻届を提出していない事実婚の場合であっても、年金分割が可能です。
婚姻前または婚姻解消後に、事実婚であった期間がある場合、その部分も一体の期間として、基礎年金の算定期間に参入することが出来ます。
第3号被保険者であった期間は、平成20年4月1日以降の分については3号分割によって自動的に分割されるので相手の合意が不要ですが、平成20年4月1日より前の期間については、当事者の合意による合意分割をする必要があります。
離婚分割は、離婚または事実実婚解消から2年以内に年金分割請求をする必要があり、合意分割でも、いずれか一方が国民年金の第3号被保険者となっている期間のみに限られます。 また、事実婚の解消後に相手が死亡した場合には、その死亡した日から起算して1か月以内に請求する必要があります。
なお、事実婚から法律婚に移行した場合には、婚姻前の事実婚の部分のみで年金分割することは出来ませんので、離婚後に年金分割することになります。
法律婚の場合は、戸籍によってその期間が明らかですが、事実婚の場合には、別途、その事実を証明する資料の提出が必要になります。
同一世帯となっている住民票があり、住民票に世帯主との続柄が「夫(未届)」や「妻(未届)」と記載されているか、さらに、第3号被保険者(被扶養配偶者)になっているか、等の疎明資料が必要となります。
令和元年6月20日以降は、住民基本台帳法の一部が改正され、住民票の除票及び戸籍の附票の除票の保存期間が5年間から150年間になりましたが、平成26年6月19日以前に消除または改製された除票については保存期間を経過しているため交付してもらうことが出来ませんので、代わりに戸籍の附票によって疎明することになりますが、同居しているだけでは事実婚であることの証明にはなりませんので、別途、事実婚であった旨の証言を書いた申立書、または、宣誓供述書などの提出が必要になる場合があります。
重婚的内縁関係の場合は、通常の夫婦や事実婚とも法律上の地位や扱いが異なり、非常に難しい問題となりますので、弁護士に相談されることをお勧めします。