離婚と子ども

面会交流

面会交流とは、離婚後に非親権者(非監護親)が子と面会することです。

父母が離婚をしても、親子の関係は消滅しませんから、非親権者(非監護親)は面会交流を求める権利を有し、両親の愛育の享受を求める子の権利としての性質をも有するものであると考えられています。

東京家庭裁判所 昭和39年12月14日 決定 「未成熟子に対する面接ないし交渉は、親権もしくは監護権を有しない親と しての最低限の要求であり、父母の離婚…によつて…、一方の親が親権者も しくは監護者と定められ、単独で未成熟子を監護養育することになつても、 他方の親権もしくは監護権を有しない親は、未成熟子と面接ないし交渉する 権利を有し、この権利は、未成熟子の福祉を害することがない限り、制限さ れまたは奪われることはない」


大阪家庭裁判所 平成5年12月22日 決定 「面接交渉の性質は,子の監護義務を全うするために親に認められる権利で ある側面を有する一方,人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求 める子の権利としての性質をも有するものというべきである」


最高裁 平成12年5月1日 決定 「父母の婚姻中は、父母が共同して親権を行い、親権者は、子の監護及び教 育をする権利を有し義務を負うものであり(民法八一八条三項、八二〇条)、 婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても、子と同居してい ない親が子と面接交渉することは、子の監護の一内容であるということがで きる。」


また「民法等の一部を改正する法律」が平成24年4月1日から施行され、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める(民法766条)ことが明文により規定されました。

子が独立自活している場合は、その親と子で自由に取り決めて面会することが出来ますが、子が未成熟な間は、子どもの福祉を考慮して、その父母の間で取り決めることになります。

具体的な内容は、父母の物理的な距離や時間的都合によっても異なりますが、面会交流権の本来の目的は、子供の健全な成長のため必要性に基づくものであり、子どもの福祉・利益が最優先に考慮されるべきものです。

よって、子の福祉を害する事情がある場合には、面会交流しないと定めることもあります。

なお、養育費は「養育義務」を根拠とするものであり、子どもとの面会交流の有無とは全く別の権利義務となります。

そのため、法的には、養育費の支払いが無いことを理由として面会交流を拒むことは出来ません。

しかしながら、現実には、面会交流の取り決めの有無と養育費の取り決めの有無、および、面会交流の実現と養育費の実現には、大きな相関性が見られることが明らかになっています。


養育費と面会交流の相関性

~親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究報告書~より抜粋
(平成23年2月 研究代表者 棚村政行(早稲田大学教授)

面会交流における取り決めと養育費に関する取り決めの相関
養育費の取り決めがある養育費の取り決めがない
面会交流の取り決めがある116件
66.7%
26件
14.9%
142件
81.6%
面会交流の取り決めがない14件
8.0%
18件
10.4%
32件
18.4%
130件74.7%44件
25.3%
174件
100.0%

養育費支払いの実現性と面会交流の実現性の相関
養育費が実現している養育費が実現していない
(無回答含む)
面会交流が行われている95件
52.2%
36件
19.8%
131件
72.0%
面会交流が行われていた10件
5.5%
6件
3.3%
16件
8.8%
面会交流が行われていない9件
4.9%
26件
14.3%
35件
19.2%
114件
62.6%
68件
37.4%
182件
100.0%

面会交流しない定め

ご夫婦当事者間で、面会交流しない旨の合意をすることは可能です。

ただし、法律上は、原則として、正当な理由がない限り、面会交流を拒絶する術はありません。

正当な理由なく被監護親からの面会交流の要望を拒絶してしまうと、調停や審判を申し立てされて裁判所から関節強制(面会させるまで月●万円支払えなどの命令)を受けたり、面会交流権の侵害に対する慰謝料請求の訴訟を起こされる場合もあります。

面会拒絶の正当事由

面会交流を拒絶出来る正当な理由(正当事由)には、以下のようなものがあります。

  • 子の虐待のおそれ
  • 連れ去りのおそれ
  • 監護親へのDVのおそれ
  • 子自身の拒絶

面会交流で定める項目

面会交流については、おおむね以下のような事項を定めます。

  1. 面会の頻度、時間、回数
  2. 面会時の引渡しや実施の方法
  3. 面会以外の電話やメールなどの交流の頻度や制限の有無
  4. 夏休みや冬休みなどの宿泊の有無、日数・回数
  5. 運動会や入学式などの学校行事に関する参加の有無
  6. 誕生日やクリスマスの面会やプレゼントの有無や制限

面会交流の記載例

記載例1


第●条(面会交流)
乙は甲に対し、甲が丙と面会交流することを認容する。
面会交流の回数についての制限は設けないものとするが、日時、場所、方法等の必要な事項は、丙の福祉を害することがないように甲乙互いに配慮し協議決定する。


記載例2


第●条(面会交流)
乙は甲に対し、甲が月に1回程度、丙と面会交流することを認容する。
面会交流には乙が同席するものとし、甲は、甲の恋人や配偶者、親族を同伴させてはならないものとする。
面会交流の時間帯は朝9時から17時までの間、面会交流の場所は東京都内とし、具体的な日時、場所、方法等の必要な事項は、丙の福祉を害することがないように甲乙互いに配慮し協議決定する。
面会交流に伴って生じる交通費などの必要な費用は、甲が負担するものとする。



記載例3


第●条(面会交流)
乙は甲に対し、甲が毎月2回程度、丙と面会交流することを認容する。
前記の他、運動会や入学式などの学校行事への参加出席、および、夏休みや冬休み期間の面会交流に関しては、年間10日間、1回の連泊を2日まで認容するものとする。
誕生日やクリスマスのプレゼント、面会を伴わない電話やメールでの交流に関しては、制限を設けないものとする。