離婚の慰謝料とは、離婚に至る原因となる行為および離婚自体について、精神的苦痛を償うために支払う損害賠償金のことです。
原則として、離婚の原因を作った側が相手方に対して支払います。
そのため、「性格の不一致」など、特に理由がなく双方が合意して離婚をした場合には、原則として「慰謝料」は発生しません。
双方に原因がある場合には、「過失相殺の法理」により(故意の場合でも)、責任の大きい方が差額分を支払うということになり、責任が同程度の場合には、慰謝料の支払いは発生しません。
主要な慰謝料の発生原因には、以下のようなものがあります。
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夫婦双方に離婚原因がある場合や、離婚原因をつくった相手方にも過失がある場合、過失相殺して考慮する必要があります。
離婚の慰謝料金額の算定において考慮すべき事情には、以下のようなものがあります。
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離婚の慰謝料は、必ずしも決まりや計算式がある訳ではありませんので、原則として、夫婦間の協議によって自由に取り決めることが可能です。
ただし、夫婦間の話し合いで合意がつかないときには、最終的には、家庭裁判所の離婚調停や訴訟によって解決するしかありません。
慰謝料の金額は、著名人の場合だと数億円などの事例もありますが、一般に、裁判例においては、大半が数十万円〜500万円の範囲内となっております。
そして最も多いのが100万~300万円であり、慰謝料の相場とも言われています。
離婚の慰謝料については、裁判所で認められたものではありませんが、婚姻期間と離婚原因・有責性の度合いに応じた基準として、大阪弁護士会の「家事事件審理改善に関する意見書」で提言されたものとして、以下の表です。
婚姻期間 | 1年未満 | 1~3年 | 3~10年 | 10~20年 | 20年以上 |
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責任軽度 | 100 | 200 | 300 | 400 | 500 |
責任中度 | 200 | 300 | 500 | 600 | 800 |
責任重度 | 300 | 500 | 700 | 900 | 1,000 |
【単位:万円】 参考文献:『慰謝料算定の実務』千葉県弁護士会編(出版社:ぎょうせい) |
なお、上記の「慰謝料」は離婚原因があることによって生じる慰謝料ということで「離婚原因慰謝料」とも呼ばれますが、そのほか、離婚したこと自体によって多大な精神的苦痛や損害が生じる場合を考慮し、慰謝料を認める場合もあります。
例えば、専業主婦として20年~30年、家庭の維持に貢献してきた人が離婚するとなると、現実問題として、社会復帰出来るのかも、大きな問題であり、とても耐えがたい不安や苦痛を生じます。
そのような、離婚ということ自体に慰謝料を認める場合を「離婚自体慰謝料」といいます。
離婚自体慰謝料の金額の算定においては、自活の困難度、相手方の収入や社会的地位、結婚年数、等が考慮されます。
離婚慰謝料の範囲
本来、離婚の慰謝料というものは、離婚に至った原因事実をすべて考慮して決定されるものです。
そして、最高裁の昭和31年2月21日判決によれば、「離婚の場合における慰謝料は、身体・自由・名誉を害された場合のみに限局するものではない」とされています。
ただし、離婚そのものの慰謝料とは別に、個々の不法行為に対して慰謝料の支払が命じられる場合もあります。
大阪高裁平成12年3月8日判決では、以下のとおり、個別に慰謝料を含む損害賠償の請求を認めています
(1)離婚についての慰謝料として350万円
(2)大けがを負わせ、入院したり通院したことについての慰謝料100万円
(3)後遺症を負ったことに対しての慰謝料500万円
(4)後遺症を負って将来働けなくなった分の損害賠償として1113万5023円
但し離婚成立から6ヶ月を経過するまでの間は、時効が停止します。
そのため、損害及び加害者を知ったときから3年が経過していても、離婚から3年以内であれば請求することができます。
離婚そのものによる慰謝料請求は、離婚成立の日から3年以内に請求する必要があります。
支払が遅れた場合の罰金
一般に、個人間で取り交わした条件をみると、「慰謝料●●万円を●年●月●日までに支払う。もしも支払を遅れた場合には、追加で●●万円を支払う」等という内容が記載されている場合があります。
しかしながら、原則として、金銭債務の不履行に関しては、民法419条により、その損害賠償の額は、法定利率によって定めなければならないことになっております。
そのため、本来であれば、
「第●条に定める慰謝料の支払を遅延した場合には、第●条に定める債務より既払金を除く残額に年率14.6%の割合による遅延損害金を付加して支払う」
等の表記をすることになります。
もしくは、仮に慰謝料が100万円で、期日までに支払いをしない場合に追加で100万円、という定めにするのであれば、
「Bは慰謝料として金200万円の支払義務があることを確認する。ただし、Bが第●条に定める期日までに、内金100万円を支払った場合には、AはBに対し、その余の残金100万円を債務免除する」
等のような停止条件付きの定めにすることも可能です。