離婚と子ども

親権・監護権

子供


親権とは、子の父母が子に対して有する、身分上及び財産上の保護・監督・教育・管理などを内容とする、包括的な権利及び義務の総称です。

親権には、大きく分けて「身上監護権(監護教育権)」と「財産管理権」とがあります。

親権の内容
 身上監護権 
  • 身の回りの世話をする
  • 懲戒権(子供のしつけ)
  • 教育を受けさせる
  • 居所指定権
  • 職業許可権
 財産管理権
  • 財産の保存・改良・利用・処分
  • 代理人として法律行為を行う

父母の婚姻中は、共同して行使するのが原則です(民法818条1項・3項)。
父母が婚姻関係にない場合は、いずれか一方が単独で行使します(民法819条1項)。
そのため、離婚する際には、いずれか一方のみを親権者と定めなければなりません。


民法818条(親権者)
成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。
  ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。


協議離婚をする場合、未成年者の親権者の定めは、離婚届の絶対的記載事項ですので、親権者を定めておかなければ、離婚届を受理してもらうことは出来ません。
子供が複数いる場合には、それぞれの子供について親権を定める必要があります。

なお、離婚時の親権者は、父母の協議で取り決めることが出来ますが、離婚後の親権については、必ず家庭裁判所の許可を得る必要があり、父母間の合意のみで変更することは出来ません。

また、親権には、予め、条件期限を付することもは出来ません。

× 「母が○○となった場合は父に変更する
× 「何歳までは母、何歳以降は父とする


なお、いずれか親権者でなくなる場合でも、決して親と子の関係が無くなる訳ではありません。
面会交流する権利もありますし、親としての養育義務は消滅しません。
お子様にも相続権や扶養請求権があります。
また、万が一、親権者が死亡したり、もしくは不慮の怪我や病気で親権を行うことが出来なくなった場合には、もう一方の親は、家庭裁判所に親権者変更の審判を申し立てることができます。

両親双方にとってとても大切なお子様ではありますが、離婚時の親権については、一緒に共同生活して日常の監護をする担当者を決めることであると理解し、お子様の生活などを考えてお決めになられた方が良いと思います。


親権と監護権の分離(分属)

民法は、第819条において親権者を定めること規定しており、それとは別に第766条第1項においては、監護権者についても規定しており、親権と監護権とを分属して定めることが想定されていると考えられています。

実際、調停においても親権と監護権とを分属させる決定を出す場合があり、親権者変更の申立とは別で監護者指定の申立を行う場合もあります。

この場合の「親権者」とは、冒頭に記載した「財産管理」をする者であり、監護者が「身上監護」をする者、ということになります。
離婚届には、一緒に生活して生活や教育を担う「監護者」を離婚届上の親権者として記載します。
もう一方の「親権者」は未成年者である子の法定代理人となり、財産の管理や重要な契約などに関する代理権・決定権を持ちます。

分属させる理由として多いのは、以下のようなケースです。
1)子が乳幼児や障害を持つ場合などで、
  父母の一方が監護養育に適している場合
2)父母双方が親権者になることを争っている場合などで、
  分属することが子の精神的安定に繋がる場合
3)できるかぎり共同親権の実現に近づけようとする場合


ただし、裁判所も公証役場も、特段の事情や理由が無い限り、あまり分属を認めたがらない傾向にありますので、注意が必要です。


協議で親権者が決まらない場合

離婚時の親権者は、父母の協議によって自由に取り決めることが可能です。
しかし、離婚成立後は、当事者の合意では変更することができず、裁判所の調停ないし審判の手続きを経る必要があります。
また、離婚後の親権変更についても同様に、当時者の合意では変えることができず、裁判所の調停ないし審判の手続きを経る必要があります。
裁判所の審判においては、90%が、母親を親権者とする決定がなされています。

裁判所が親権者を決定する場合の判断基準としては、以下のようなものがあります。

裁判所が親権者を決定する場合の判断基準
 判断基準
  • 父母の資質
    年齢、職業、収入、学歴、職歴、犯罪歴、婚姻歴等、健康状態、生活態度
  • 監護の態勢
    監護の実績、経済状況、居住環境、生活・教育環境、子と接する時間、協力援助する親族の存在
  • 母性優先の原則
    乳幼児~9歳程度までは母親の方が良いとされます。
  • 子どもの意思の尊重
    10歳以上であれば意思能力も充分であるため子の意思も尊重されます。
    特に子供が15歳以上の場合、調停においては、必ず子供の意見を聞かなければなりません。
  • 現状維持の原則(継続性の原則)
    特に幼稚園生から中学生の子供には、仲の良い友達や慣れしんだ街から離れる影響を考慮されます。
  • 兄弟姉妹不分離の原則
    兄弟姉妹は、出来る限り身近にいて共に成長していくことが人格形成上重要だと考えられています。

子どもの後任の後見人を事前に定める方法

離婚に伴い、単独親権となりますので、もしも親権者が不慮の事故や病気で他界した場合のために、子どものことを任せる「未成年後見人」をあらかじめ選任しておきたいという場合があります。

しかし、通常、後見人は家庭裁判所に選任の申立を行い、裁判所によって選任される必要があるため(民法841条)、離婚協議書や離婚給付契約公正証書などにより、当事者間の合意で後見人を指定することは出来ません。

ただし、親権を行使する者は、遺言で後見人を指定することが出来ます(民法839条)。
※後見人の指定は遺言でしか行うことが出来ません。
※未成年後見人は、自然人の他、法人を指定することも、複数指定することも可能です。
※遺言で、後見人を監督する「後見監督人」を指定しておくことも出来ます。

未成年後見人を指定することができるのは「最後に親権を行う者」(民法839条)であり、未成年後見監督人を指定することができるのも「最後に親権を行う者」(民法848条)とされています。

夫婦が離婚をしていない場合には、未成年の子は父母の共同親権に服しているので、 父母はいずれも遺言で、未成年後見人や未成年後見監督人を指定することが出来ません。

離婚成立後であれば、単独親権となるので、親権者が、遺言によって未成年後見人や未成年後見監督人を指定することが可能ということです。

遺言よる未成年後見人の指定においては、未成年後見人となる人の同意や承諾は不要です。

この遺言で指定された後見人のことを「指定後見人」といいます。

指定後見人に関しては、家庭裁判所の審判許可を得る必要ありません。

未成年後見監督人は、複数指定をすることも可能です。

指定後見人は、遺言の効力発生時(被相続人死亡時)に就職したものとみなされます。

指定後見人は、その就職日から10日以内に、市区町村の役所(役場)に、遺言書と一緒に「未成年後見開始届」を提出する必要があります(戸籍法81条)。

指定後見人には、法定代理人として、未成年者の財産管理権があります(民法824条、民法859条)。

未成年後見人が辞任しようとする場合には、正当事由と家庭裁判所の許可が必要となります。
正当事由には、住まいが遠方であるなどの地理的事情や、病気・高齢などの身体的事情などが考えられます。