離婚後の苗字と戸籍

氏の継続使用

結婚する際は、夫婦いずれか一方を筆頭者として新しい戸籍が作られ、夫婦が同じ苗字(名字・氏・姓)を名乗ることになります。

戸籍法16条
婚姻の届出があっらときは、夫婦について新戸籍を編製する。
但し、夫婦が、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。
2 前項但書の場合には、夫の氏を称する妻は、夫の戸籍に入り、妻の氏を称する夫は、妻の戸籍に入る。

民法750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。


結婚する際に苗字を変えなかった側の人は、離婚をしても、そのまま何も変更はありません。
一方、結婚した際に苗字を変えた側の人は、原則として、離婚の成立と同時に結婚する一つ前の姓(父母の姓など)に戻ります(「復氏」といいます)。
ただし、離婚成立の日から3ヵ月以内であれば、役所に「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出することで、離婚するまで結婚していたときに名乗って「苗字」をそのまま使用することができます(「婚氏続称」といいます)。

民法767条(離婚による復氏等)
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。


この3ヶ月というのは、仮に怪我や病気その他の災害があったとしても延長することは出来ません。
仮に離婚して3ヵ月以上経ってから、結婚していたときの氏を名乗りたいと場合には、家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」をして許可をもらわなければなりません。

戸籍についても、苗字を変えなかった側の人は、離婚をしても、そのまま何も変更はありません。
一方、結婚した際に苗字を変えた側の人は、結婚前の戸籍に戻る(旧姓に戻ります。「復籍」といいます。)か、もしくは新戸籍を作成する(旧姓・結婚時の姓どちらでも可)かを選択することになります。

ただし、離婚後に子供を自分の戸籍に入れる場合は、結婚前の戸籍に戻ることはできず、新たな戸籍を作る必要があります。
また、父母が他界して結婚前の戸籍が除籍されている場合も、新たな戸籍を作る必要があります。

復籍した後に新戸籍を作ることは可能ですが、新戸籍を作った後に婚姻前の戸籍に戻ることは出来ませんのでご注意下さい。

新しい戸籍を作る場合、その本籍地をどこに置くかは、日本国内であれば、どこでも自由にも決めることが出来ます。

結婚時に、夫を筆頭者として戸籍を作成した妻が、離婚して子供の親権者になった場合、子供は夫の戸籍に入ったままになっています。
仮に「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を提出して、結婚していたときの「苗字」をそのまま使用したとしても、子供の戸籍は変わりません。
子供を自分の戸籍に入れたい場合には、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可」の申立を行い、許可も貰い、役所に「入籍届」を提出する必要があります。

また、親が婚姻前の戸籍に復籍した場合で、その子の「氏の変更」について家庭裁判所の許可を受けた場合は、新たに戸籍が作られることになります。

民法791条(子の氏の変更)
子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3 子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4 前3項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。

戸籍法6条
戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。


離婚協議書・公正証書の効力
離婚協議書や離婚公正証書は、作成した時点での合意内容や当事者を証するものであり、後日、名字(氏)を変更したとしても、その文書が無効になることはありません。
強制執行の申立などをする場合には、戸籍謄本などによって同一性を証明することにより、公正証書正本や判決文に「承継執行文の付与」などの手続きが必要になりますので、詳しくは、公証人や弁護士などにご確認下さい。