公正証書のメリット

強制執行認諾条項(強制執行認諾約款文言)

強制執行とは、債務者(支払義務者)の財産(給与や報酬、口座預金、不動産など)を国が債権者の代わりに強制的に差し押さえ、不動産や動産については競売などで換金し、弁済に充当するという制度のことです。

通常、強制執行を行うためには、裁判(民事訴訟)を提起して得た勝訴判決などの「債務名義」が必要であり、多大な費用と時間を要することが大半です。

ただし、公正証書の場合には、債務者が、予め、約束の弁済を怠った場合には強制執行されることに同意承諾することを条件として、その旨を文中に明記している場合に限り、特別に、裁判を経ることなく強制執行の申立を行うことが出来ます。

公正証書の文中に「強制執行」することを「認」めて承「諾」する条項(約款)のことであり、これを「強制執行認諾約款(強制執行認諾約款文言)」等といいます。

民事執行法22条(債務名義)
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
(~中略~)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
(~後略~)


この民事執行法22条5に定めるものとしては、借金、慰謝料、売買代金、賃料、その他の売掛金、養育費、などがあります。
「一定」といえるためには、金額や期限、利率などが確定的に定まっている必要があります。
よって「手取り給与の○○の%」「●●株」のように、その都度金額や価値が変動するものや、違約金や「●●になった場合」など、条件や不確定期限の内容、面会交流や所有権移転登記など前記5に該当しない債務の履行については、公正証書による強制執行をすることが出来ませんので、別途、裁判手続が必要になります。
※もちろん、調停や訴訟などの裁判手続で認めてもらうための証拠として、取り決めた条件内容を文中に記載しておくことは重要です。

強制執行の手続きに関する詳細については、こちらをご確認ください。